シンリード@理系読書

理系大学院生による書評と読書感想文

「PIXAR」世界一のアニメーション企業のお金の話【要点まとめ・レビュー】

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満足度 ★★★★★

最近読んだ本の中では、最上位を争う一冊。実際にピクサーの中で働いた人が書いた本なので、情景が見えて面白い。

【本書概要&感想】

 著者はローレンス・レビー。EFI(エレクトロニクス・フォー・イメージング)の副会長兼最高財務責任者として上場させた経験あり。急なスティーブ・ジョブズからの電話によって、1995年にピクサーに着任。

 彼が着任したとき、ピクサーの資金はジョブズのポケットマネーから出ており、非常に財政が危うい状況であった。内部は、ジョブズ派とピクサー派に分かれており、ジョブズはあまり好かれていない。そんなピクサーには4つの事業があった。

  • レンダーマンという特許のCG制作
  • コマーシャルアニメーション
  • 短編アニメーション
  • 長編アニメーション映画 (トイ・ストーリー)

である。しかし、次々と事業は縮小・廃止され、トイ・ストーリーにすべてを委ねることになる。ピクサーを成功させる上では、ディズニーとのひどい契約の解消や、制作費用の調達、制作本数を以下に増やすか、ディズニーに隠れずいかに世界的ブランドになるか、など数多くの問題が登場する。またIPOを目剤して取締役や投資銀行を探すのにも苦戦。そして、トイ・ストーリーの大ヒットを期になんとか財政を立て直して、IPOにも成功。 遂にはディズニーに72億ドルで売却。 ピクサー退任後は哲学者の道へ。 この辺の切羽詰まりながら乗り越えていく様が非常に面白い。

 ピクサーで特徴的に感じたことは、クリエイティブな側面の決定をジョン・ラセターらの現場の人間に行わせること。普通は幹部などが口をはさむが、そこはジョブズでさえも口をださなかった。また、スタートアップならではの働く雰囲気やストックオプションの問題など、普段知れない内情がざっくりと知ることができたので良かった。