シンリード@理系読書

理系大学院生による書評と読書感想文

「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」新時代はもう来ている【要点まとめ・レビュー】

世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 山口周 著

世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」 (光文社新書)
満足度 ★★★★★

現在、グローバル企業の幹部たちがこぞってアートや哲学を学んでいるらしい。

【本書概要&感想】

これまでの企業は「分析」「論理」「理性」といったサイエンスを重視してきたが、それだけでは今日の複雑で不安定な世界のビジネスの舵取りはできない。理由は大きく3つある。1つは「サイエンス的な情報処理スキルの限界」である。このスキルによる意思決定の行き着く先は"正解のコモデティ化"。そして、現在の世界情勢はVUCA(不安定・不確実・複雑・曖昧)と表現されることもあり、論理アプローチが機能しにくくなっている。このような中では、全体を直感的に捉える感性と内省的に創出する構想力が求められる。2つ目は「世界中の市場が自己実現目標へと向かいつつあること。人の欲求が、安全欲求⇒帰属欲求⇒承認欲求⇒自己実現欲求へと変わっており、自己実現欲求を刺激するには美意識が必要。3つ目は「システムの変化にルールの制定が追いつかない状況が発生していること」。法律の整備が追いつかず事後的にルールが制定される例も多く、ルールや法律だけを拠り所にするのではなく、内在的に「真・善・美」を判断するための美意識が求められる。

「アート」と「サイエンス」のバランスが大事でどちらも高い次元が必要だが、現状では説明能力の差もあってサイエンスに偏っている。よって、美意識を鍛えることが求められ、アートや哲学、文学・詩などが美意識を鍛えるきっかけになるかもしれない。