シンリード@理系読書

理系大学院生による書評と読書感想文

「FACT FULNESS」あなたもチンパンジー以下!?【要点まとめ・レビュー】

 FACT FULNESS

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

満足度 ★★★★☆

あなたの常識は20年前で止まっている。世界100万部超のベストセラー。

【感想】

人間は脳の機能によってドラマチックすぎる世界の見方をしてしまう。世界は悲劇的で悪い方向に進んでいると考えてしまっているのだ。しかし,それらの見方を正すことで物事の本筋が見えてくる。そして「事実に基づく世界の見方」ができるようになれば,心が穏やかになり判断力も上がる。まずは人間の10個の本能を知ることから始めよう。この本能による勘違いに気づくことがファクトフルネス。

1. 分断本能

本書では,所得レベルを2つでなく4つに分ける事で,より事実に近づく見方ができることが示されていた。分断の中間部分に大半の人がいることもあるので,何でも分断せずにまずは分断の言葉に気づくことが大事であると感じる。

2. ネガティブ本能

世界はどんどん良くなっている。「悪い」と「良くなっている」は両立する。良い事やゆっくりとした変化はニュースになりにくい。人々には過去を美化したがる習性がある。など気づきづらい本能であると思う。

3. 直線本能

2100年には人口が40億人増えるが,このまま増え続ける訳ではない。グラフがなんでも直線的にならないというのは,理系からしたら考えやすい内容かも。

4. 恐怖本能

恐ろしいものには自然と目がいってしまう。リスクを正しく計算する必要がある。悪いニュースを見て,悲劇的になるのではなく,危険度や頻度に目を向けて考える必要があると感じた。

5. 過大視本能

ただ一つの数字がとても重要であると勘違いしてしまう。世界の人口も大半がアジアに集まってきている。比較して考えることも重要。

6. パターン化本能

パターン化して考えてしまう本能を抑えるには分類を疑う。同じ集団の中にある違いや違う集団のあいだの共通項を見つける。一つ危険→全部危険。だったら一つ安全→全部安全と言えるのか。

7. 宿命本能

ゆっくりとした変化でも変わっている。人・国・文化・宗教も変わる。

8. 単純化本能

ひとつの視点だけでは世界は知ることはできない。トンカチではなく工具箱。キューバ人は「貧乏人の中で一番健康」or「健康な人達の中で一番貧乏」。

9. 犯人捜し本能

犯人ではなく原因を探す。誰かに責任を求める癖をなくし,その状況を生み出した複雑な原因やシステムに目を向けることが重要であると感じた。また,ヒーローばかりに目が行くが仕組みを支える人たちもいることは忘れたくない。

10. 焦り本能

「今すぐに決めなければならない」と感じたら自分の焦りに気づく。地道な一歩を積み重ねる。世界の5つのグローバルなリスク(金融危機・世界大戦・地球温暖化・極度の貧困)に対しても一歩を重ねるしかない。

世界は思ったよりも良くなってきているという事実と自分の考えのズレに驚きを感じた。私自身も知らずの内に,本能的に偏った考えを持っていることもあるということを,これからの自分にもしっかり忠告しておきたい。そして,こういった本能に囚われすぎないための考え方や,モノ・数の見方を習慣づける必要があると感じた。