シンリード@理系読書

理系大学院生による書評と読書感想文

「GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略」テクノロジーの最強集団【要点まとめ・レビュー】

GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略

GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略

満足度 ★★★☆☆

近頃、米中新冷戦について騒がれている。そんな中知っておきたいのは、アメリカのGAFA、中国のBATHという国の政治にまで影響を及ぼすほどの企業。本書では、これら8つの企業について、孫子の兵法における" 道、天、地、将、法 "の5つの観点から考察している。道・・・ミッション。天・・・タイミング。地・・・事業領域。将・・・トップのリーダーシップ。法・・・事業構造と収益構造。といった感じ。

【8社概要】

アマゾン × アリババ Eコマース

アマゾン (ジェフ・ベゾス)

地球上で最も顧客主義の会社。低価格と品揃えを極めている。事業領域は多岐にわたり、常に拡張性のある事業を手がけている。「検討・購入・受取」全てをストレス無くつなぎ、オンラインとオフラインの融合(OMO)を勧めている。AWSというクラウド事業の利益率が高い。

アリババ (ジャック・マー)

中国の新たな社会インフラ企業。アマゾン並みの事業領域の広さを持つ。金融事業に関してはアマゾンよりもかなり強く、アリペイは中国で欠かせない決済手段。OMOに関してもアリババの方が先行している。コアコマースの利益率は47%と高いが、クラウドやデジタルメディア事業の利益率は低く、アマゾンと逆の収益構造。2018年9月に、CEOジャック・マーが退任。共産党員だった事も明るみになり、中国政府との関係を疑われる。中国リスクと表裏一体である。

アップル × ファーウェイ メーカー・ものづくり

アップル (スティーブ・ジョブズ ⇒ ティム・クック)

世界初の時価総額一兆ドル超え企業。スマホ業界全体の91%の利益を生み出している。iOSを搭載することで、世界中のアプリ開発者がアプリを提供するプラットフォームとなっているのが強み。現在のCEOティム・クックは、ゲイをカミングアウトしており、多様性や人種差別問題にも取り組んでいる。プライバシー重視で、個人データの利活用はしないと明言している。信頼×安心感を武器に、今後は医療事業へ展開し、スマートヘルスケアのプラットフォームを作る可能性。

ファーウェイ (レン・ジンフェイ)

2018年に副会長が逮捕されるという、ファーウェイショックで話題。スマホに加え移動通信設備も強い。あくまでハードウェアメーカーという立ち位置で、ビッグデータやプラットフォーム獲得には乗り出していない。現在は、5G研究開発の先頭を走っている。研究開発投資も多く、アップルが利用したファーウェイの特許数は769件(その逆は98件)である。8社の中で唯一上場していない会社でありながら、情報開示に努めている。株主=社員というのも強み。米国がファーウェイ関連の部品や製品を締め出しにかかっている。

フェイスブック × テンセント SNS

フェイスブック (マーク・ザッカーバーグ)

世界の20億人が使用している。人と人とのコミュニティを構築し世界を密にする。フェイスブック・インスタなどのSNS、メッセンジャー・ワッツアップなどのメッセンジャーアプリ、オキュラスというVR事業を手がけている。収入源はほぼ全て広告であり、営業利益率は8社の中で最も高い49.7%。プライバシー重視の傾向を強めている。

テンセント (ポニー・マー)

SNSを起点に幅広い事業を手がけるテクノロジーの総合百貨店。オンラインゲームやAI×医療画像に強い。CEOボニー・マーは、慎重派で常識人の中の常識人。テスラの株を5%保有しているなど自動車事業も手がける。ミニプログラムというアプリ内アプリのプラットフォームを構築している。

グーグル × バイドゥ 検索サービス

グーグル (アルファベット:ラリー・ペイジ、グーグル:スンダー・ピチャイ)

アルファベットの子会社であるが、アルファベットの売上の99%はGoogle。アルファベット社の理念は「あなたの周りの世界を利用しやすくする。」Googleの理念は「世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスして使えるようにする。」である。スンダー・ピチャイが「愛され+有能」な存在で、働きやすい企業と謳われている。自動運転事業は8社の中でも抜きん出ている。収益の86%は広告。

バイドゥ (ロビン・リー)

BATHの中では、時価総額低め。中国の検索市場の7~8割を占め、自動運転を含めたAI事業にも強み。デュアーOSという音声AIアシスタントも手がける。自動運転のプラットフォーム「アポロ計画」を打ち出すなど、世界で最も自動運転車の社会実装が進んでいる会社で、バスでの実装実験もすでにしている。

【感想】

プラットフォームやAI×ビッグデータ、カスタマーエクスペリエンスなどが共通点であり、重要な要素に感じる。また、中国はもはや真似するだけでなく、世界最先端の技術力を持っていることを知った。本書では、今後の日本は生産性の向上だけでなく、顧客の利便性や経験価値の向上に目的をセットする必要があると述べている。米中新冷戦は、貿易や安全保障だけでなく、テクノロジー覇権争いなども大きく関与してくるとのことなので、8社の今後の動きに注目したい。